寿ぎ庵から和み舎へ
寿ぎ庵を開く前、私は数軒の飲食店に勤めました。
どこも、単なる労働でしかなく、本当に楽しいと思える職場は最後のお蕎麦屋さんだけでした。
殆どの店の裏側は散々でした。衛生的な問題、人間関係のトラブル、パワハラはどこも当たり前、横暴な態度を取る上司(社長)
店の外側と内側が全く違うのです。
「また辞めたん?辞め癖がついたんと違うん?」って弟には言われました💦
でもきっと、どこかに私が求める職場はあるはず。そう信じて毎日、求人情報を探していました。
ある日、1枚の写真がふと気になりました。
店内の写真でした。大きな木のテーブルの上にさり気なく置かれた素朴な花。
その店は、自宅から利便性は決して良いとは言えません。時給も良いとは言えませんでした。
しかし、凄く気になったので心に従って、求人に応募しました。
面接に伺うと、店内は木の柱にしっくいの壁、そして机の上には野の花が色を添える。
何だかホッとする、思った通りのお店でした。
代表である若大将の面接は、私を理解しようとする姿、誠実なお人柄がわかります。
今まで受けて来た面接とは全く、空気が違いました。
いろいろとお話しする中、「どのくらいお給料は欲しいですか?」と聞かれました。
前の主人が亡くなり、大学生の息子の仕送りが必要だから、これだけの金額は必要ですと正直に話しました。
すると…「知らなかったとは言え、失礼なことを聞いてごめんなさい」と申し訳なさそうな顔をされる若大将。
なんて、優しい方なの。
買い物から帰って来られた若奥さんも、明るくハキハキされていて、とても感じの良い方でした。
面接が終わると、すぐにでも来ていただけますか?と言われ、翌日からお世話になることに…
弁護士、医者、芸能関係、有名店のシエフ、凄いお客様ばかりです。
なので見ているところが違います。気を抜くことが出来ませんでした。
若奥さんは、広島の山奥の小学校の先生で、ご縁から大阪の老舗のお蕎麦屋さんに嫁ぐことになったとお聞きしました。
畑違いの仕事。厳しい大将、奥さん(義親)のもと、それはそれは泣く日も多かったとか…。
若奥さんの姿に母の姿を重ねました。何を言われても耐え、我慢する母。誰にも言えないことが、どんなに辛いかわかるから。
普段は明るい若奥さんです。毎日おやつを用意してくれて夜の部に入る前に、みんなでおやつタイム!
毎月手渡しでくれるお給料の明細書にはいつも若奥さんから直筆のあたたかいメッセージが、書かれてありました。
店を辞める最後の明細にはこのように書いてくださっていました。
昨年の2月8日より本当にありがとうございます。自分の店のように”なにわ翁”を大切に思い、お客様を大事にしてくださり、感謝の気落ちでいっぱいです。
仕事に対する責任感とガッツ、集中力、たくさんのことを学ばせていただきました。
開店に向け、パワー全開!!エネルギーを感じます。
黒明さんのそのパワー、エネルギーはきっとお客様を惹きつけること間違いなし!!
心から応援しています。身体だけは大事になさってくださいね。
うるうる😢こんなに従業員のことを思ってくれるなんて、私はなんて素敵なお店に勤めてたんだろう。改めて感謝しました。
吟味した材料と技術で価値を生み出す ”なにわ翁”さん。
産地まで出向き厳選したそばの実、製粉所を構え、毎日挽きたてを提供する。それはそれは、気の遠くなる作業です。
あの時の私が、ふと気になった写真、今に繋がっていたのだとはっきりわかります。
辞める日に当時中学生の娘さんと、小学校5年生の息子さんがくれた手紙です。
1年間という短い間でしたが、
お母さんを助けてくださりありがとうございました。
たった1年間なのに、とっても楽しい日々を
過ごしていたように感じました。
黒明さんとはクッキーの作り方を教えてもらったり、
大晦日などたくさんの思い出があります
なにわ翁がピンチの時には助けてください。
by娘さん
1年という短い間ありがとうございました、
黒明さんは常にお母さんの励みになって
明るく太陽のような存在でした。
これからも太陽のような存在で頑張ってください。
by息子さん
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二人ともお母さんの後ろ姿を、本当によく見てるんです。お母さんをいつも見守っています。
なにわ翁さん
今では客の途絶えない人気のお店となりましたが、当初は苦難の連続だったそうです。
大将(お父さん)が開いていた定食の値段で食べれるのはざるそば一枚、怒って離れていくお客様もいたとか。
かたや”翁”の名を聞いて食べに来たお客様からは、箸袋に「ほんまに翁で修業したんか」などと書かれることもあったそうです。
「だまらしてやる」
そんな思いでそばを打ち続けるうちに動きに無駄がなくなり、スピードもあがり、いつしか批判の声はなくなったそうです。
悔しいという気持ちが生まれるからこそ、もっと上を目指そう!頑張ろうと思えるわけですし、見返してやろうと思うのです。
悔しさがなければ今の自分で諦めて変わろうとはしない。
変化しなければ成長もないのです。
人生の転機は、変化や成長につながる課題とともに現れる。
若大将の蕎麦を打つ姿は”神業です”
今では師匠を超える蕎麦を打つと、お客様から言われています。
なにわ翁さんHP
https://naniwa-okina.co.jp/
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